2008-12-18(Thu)
「進学格差―深刻化する教育費負担」読了
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格差社会の問題意識が広がり、その中で格差は遺伝する、という指摘がされてきている。曰く、収入が低い家庭では教育にかける費用が少なくなり、進学もままならなくなる、ということ。
本書では高等教育(大学、短大、専門学校等)への進学と家庭の収入との関係、世界の高等教育に対する教育費のあり方、などを紹介し、これから日本では教育費用にかかわる問題に警鐘を鳴らす。
とくに家庭の収入と進学に関する統計調査は重要。
本書では格差社会の遺伝ということについては特に記述しているわけではないが、低所得の家庭では進学に関して悩んでいることを示している(私大で自宅外から通学するという一番お金がかかる方法は選択できない、という問題)。
本書ではかかれていなかったけど、地方と都市部の収入格差も問題の一員であろうと思われる。すなわち、大学が都市部に多く、費用の問題がなければ行きたいと思う大学が、地方の受験生とその家庭にとっては費用がかかりすぎる、ということで断念していることだ。都市での生活費が高いうえ、地元の収入は都市部に比べ低いので、都市部で生活している家庭に比べ格差がある、ということ。
解決の方法としては、奨学金とか政府助成金の拡大であるが、予算が増えることはないだろうことを思えば奨学金の拡大がもっとも現実的な解であろう。奨学金も返還の必要のないものと低金利の貸与とがあるが、将来の返済の難しさが想像出来る不況下の受験生とその家族にとって、学生向けの奨学金というローンは選び辛い。
新しい方法として、2007年に東大で始まった130億円基金がある。本書で紹介されているが、基金により、一般の人たちから寄付金を集め、収入の少ない(年収400万以下の家庭)学生の授業料を免除する、というもの。 あまり知られていないと思うけど、大学などの教育機関への寄付金は所得控除になる。上限が所得の40%だけど、年収によっては所得税率が20%から15%に減らすことができます。考え方としては、税として政府の予算に組み込むか、大学への寄付にして、教育のため、という目的が決まった方法で社会のために使ってもらうか、という違いでしょうか。目的税に近いです。目的税よりさらに細かいですが(特定の大学の運営に使用される)。
こういった情報をもっと社会に周知させるべきでしょう。
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